おいしい揚げものが食べたい! 普段できるだけ安全な食べ物をと気をつけている人の中でも、案外ノーマークだったりする揚げ油。原料の産地や加工方法などによって、風味や安全性も全く異なるので実は要注意です。おいしい有機野菜をもっとおいしく食べていただくために、これから油と調味料について詳しく解説したいと思います。 どんな油を使っていますか? スーパーでよく見かけるのは、1リットル入りで300円から500円の油です。しかし店によっては1000円近く、さらにそれ以上高い揚げ物用油も販売されています。この価格の差はなんだと思われますか?そして、両者にはどんな違いがあるのでしょうか? 油の抽出方法 油の抽出方法は、大きく2種類にわけられます。 1.圧搾法 昔ながらの方法で、菜種やゴマなどの穀物に重しで圧力をかけて、しみだした油を漉すなどしたもの。素材から抽出できる油の量が少なく、抽出時間も長くなるので、効率が悪く、価格が高くなりますが、加熱処理をしていないので、油脂の成分が変化しておらず、酸化しにくいのが特徴です。 2.抽出法 ヘキサンという溶剤を使って材料から油を取り出す方法です。油脂分の少ない大豆や米ヌカでは、菜種のように圧搾しても油を取り出すことはできないので、すべての製品でこの方法を使用しています。圧搾法よりも搾れる油の量が多く、効率が良いので、安価な油を製造することができます。 ヘキサンについて ヘキサンは石油由来の有機溶剤です。そのまま摂取すれば人体に有害ですが、油の製造に使用する場合は、製造工程で完全に除去されるので、抽出した油にはヘキサンは含まれていません。それならば、特に問題もなく、安くて効率がいい方がいいと思われるかもしれませんが、実はヘキサンよりも、抽出後の油を精製するために加熱することによって油の構造が変化し、悪名高いトランス脂肪酸※1が生じたり、低温圧搾の油と比較すると酸化しやすい油になっているということの方がむしろ心配です。 ※1トランス脂肪酸 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9%E8%84%82%E8%82%AA%E9%85%B8 揚げ物を食べて、胃もたれや胸やけをおこすということは、このように酸化した油を摂取している可能性が高いのです。良い油を使用したとしても、温度を上げすぎたり、長時間使用し続けたりすると、いずれ油は酸化するので、上等の圧搾油でも使用方法によっては害になるということにも注意する必要があります。 油の原料について 安い油ほど原料コスト削減のため、効率重視の農産品が原料として使用されています。特に油では「遺伝子組み換え作物」※2を使用している可能性があります。油脂それ自体を販売する場合、原材料に対して「遺伝子組み換えではない」という表記が出ているものが大半ですが、業務用の油など、惣菜や菓子に使用する場合は、表示義務がないため、知らず知らずのうちに遺伝子組み換えの作物を摂取してしまう可能性が高いということです。 ※2 遺伝子組み換え作物 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%81%BA%E4%BC%9D%E5%AD%90%E7%B5%84%E3%81%BF%E6%8F%9B%E3%81%88%E4%BD%9C%E7%89%A9 (この項目にはウィキペディアにおける良記事を示す☆のマークがついていますね) 例えば、サラダ油の原料として、よく綿の実の油が使われますが、綿に関しては、主に食用ではなく繊維生産が目的であるため、生産効率のいい遺伝子組み換え品種への移行が、比較的抵抗なく進められてきました。その割合は世界中の綿花生産量の約75%にものぼるといわれています。ここで綿の実は副産物になるのですが、当然そちらもほとんどが遺伝子組み換え作物ということになります。そしてこの綿実油は安価な上、サクサクと軽く揚がるので、低価格なスナック菓子や冷凍食品のフライなどにもよく使用されています。 遺伝子組み換え作物については、それを摂取したことによる人体への影響はまだ解明されていません。ただその先が未知数なのに、許可されているから大丈夫と思えるはずもなく、少なくとも私はこの無責任な人体実験にあえて身を挺すことはありません。「ただちに害はない」ということはすなわち、「もっと後で何かあっても責任は取れないよ」ということですから。 おすすめの油 難しい話はこのへんで、具体的油を選ぶためのチェックポイントとおすすめの油についてまとめます。 ポイント1・遺伝子組み換え作物を使用していない ポイント2・低温圧搾(コールドプレス) 一番搾り※3 低温圧搾で抽出できる原料としては、菜種とゴマが一般的ですが、普段使いには菜種が適しています。焙煎していないゴマを搾油した「太白ごま油」は、やや高価ですが、風味も良く、サクッと揚がるので天ぷら専門店でも使われています。 ※3 一番搾り 圧搾では、搾りかすに油分が残るので、搾りかすから抽出法でさらに油をしぼって圧搾の油と混合して販売している場合もあります。一番搾りと表示がある場合は、低温圧搾の油のみを使用しているということです。 さらに国産材料を使用した油なら理想的ですが、国産の菜種は生産量が少ないので、普段使いとして、非遺伝子組み換え、オーストラリア産菜種油を使用した菜種油を使用しています。揚げかすや粉が混ざると、酸化の原因になります。必ずオイルポットを用意して、使用後はこまめにろ過。温度管理に気をつけて、酸化させないように、揚げ物の後は炒め物にも使い、油が疲れる前に※4つぎたしながら、常に回転するようにしています。 ※4 油を捨てないで使う方法 良い油は、できるだけ無駄なく利用したいところ。揚げ油は一回使ったら捨てる。という人もいますが、それではもったいない。コツさえつかめば、油は長持ちしますし。うまく使い切ることもできます。 まずは、揚げかすをろ過するオイルポットを用意して、使ったらまず熱いうちにろ過。油を使い続けると、油の粘度が増して、からっと揚がらなくなってきますので、そういう時は、めんどうがらずに一度火を止め、油を一度ろ過してから新しい油を2~3割足せば、またからっと揚がるようになります。オイルポットの油は、揚げ物だけでなく炒め物にも使うようにすると、使った油が酸化する前に使い切ることができます。魚介を揚げた時は、油ににおいがつきますので、少々もったいないようですが新聞紙などに染み込ませて処分しています。 菜種油のおすすめ 安全はもとより、目から鱗のおいしい揚げ物。一番のコツは油選びです。さっそく試してみてくださいね。
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12月 2021
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